マイクロプラスチック問題

1.マイクロプラスチックとは

 マイクロプラスチックとは、1~5 mm以下の微小プラスチック粒子※1とされ、近年のプラスチック消費量の増大により、海洋に流出していることが問題視されています。海洋生物がこのマイクロプラスチックとそれに付着した有害物質(残留性有機汚染物質:POPs(Persistent Organic Pollutants※2))を摂取することにより、食物連鎖を経て鳥や人間に生物濃縮することが懸念されており、国においても調査が実施されています。マイクロプラスチックには、さまざまな発生源が考えられています。

<1次マイクロプラスチック>

洗顔料、化粧品、研磨研削材やペレット等に含まれるマイクロビーズ

マイクロプラスチック
※写真は環境省資料より

<2次マイクロプラスチック>

プラスチック製品やレジ袋等の海洋ごみが波や紫外線等により劣化・粉砕したプラスチック破片や、フリース等の衣類から解けた合成繊維

マイクロプラスチック

※1:マイクロ(μ)とは、100万分の1をいいます。直径5 mmより小さなプラスッチックごみをマイクロプラスチックと呼んでいますが、正確な寸法の定義はありません。

※2:POPsとは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性、人の健康・生態系有害性をもつDDT等の農薬・殺虫剤、PCB等の工業化学品、ダイオキシン類等の物質を指します。POPsによる地球規模の環境汚染の防止が不十分であることから、「残留性汚染物質に関するストックホルム条約」が2004年5月に発効され、その廃絶と削減を図るために製造、使用の原則禁止や非意図的生成物質の削減対策がなされています。日本では、環境省が水質、底質、生物(魚類、貝類、鳥類等)、大気質のモニタリング調査を行っています。

2.マイクロプラスチックの海洋への流出とその影響

 マイクロプラスチックの海洋への流出は、地球全体でその存在が報告され、日本においても湾内や琵琶湖の魚の消化管からマイクロプラスチックが検出されているほか、東日本大震災により漂流したごみもその一因であるとの指摘もあります。

 環境省が実施した日本海や太平洋沖での調査では、海水1トン当たり2.4個のマイクロプラスチックが確認されています。

海洋への流出とその影響

 また、平成29から30年には、東京農大が東京湾で獲れたカタクチイワシ64匹の消化管を調べた結果、8割近くの49匹から計150個のマイクロプラスチックが検出されています。うち、0.1~1 mmのサイズが全体の約8割を占めており、約1割がマイクロビーズであったとの調査結果がまとめられています。
 岸に打ち上げられたごみは波や紫外線により小さく砕け、微小となったプラスチックは浮き上がらないために沖へ移動していくものと考えられています。
 マイクロプラスチックを摂取した海洋生物への影響は、

 〇摂取器官の閉塞や損傷
 〇プラスチック成分や付着したPOPsの体内残留と濃縮による発育不足
 等が考えられ、プラスチックは生分解性がないため生体への影響が懸念されており、地球全体に及ぶことからその実態は未だ解明されていない状況です。
 近年、脱プラスチックに向けた取り組みや分解性プラスチックの開発が進められつつあります。

3.海岸漂着物処理推進法の改正内容

 (美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律 平成30年 法律第64号改正、旧法平成21年 法律第82号)

 漂流ごみや海底ごみが漂流することのみならず、船舶の航行や漁場環境の支障となり、海洋環境に影響があること。また、台風等の災害により大量に発生した海岸漂着物等が住民の生活や経済活動に影響を及ぼすこと。また、海岸漂着物には生活に伴い発生した多くのプラスチックごみが占めていること。さらには、マイクロプラスチックが有害化学物質を吸着、含有して植物連鎖を通じて海洋生態系に影響することが懸念されること等から次のような海岸漂着物処理推進法の改正がなされました。

(1)海岸漂着物等が海洋環境保全を図る上で深刻な影響を及ぼしていることや海岸漂流物等が大規模な自然災害の場合に大量に発生していることが目的に追加されました。(法第1条)

(2)沿岸に漂流し、または海底にあるごみ等を「漂流ごみ等」と定義し、「海岸漂着物等」に追加されました。また、国や地方公共団体は、地域住民の生活や経済活動に支障を及ぼす漂流ごみ等の円滑な処理の推進を図るように努めることとされました。(法第2条、新第21条の2)

(3)海岸漂着物対策は、循環型社会形成推進基本法等による施策と相まって、3Rの推進による海岸漂着物等の発生の効果的な抑制を図ることが追加されました。(法第5条)

(4)マイクロプラスチック対策として、その基本理念はプラスチック類の円滑な処理と廃プラスチック類の排出抑制、再生利用等による廃プラスチックの減量その他適正な処理を図られるよう十分に配慮されたものでなければならないとし、そのための事業者の責務が規定されています。さらに政府は、海域のマイクロプラスチックの抑制のための施策のあり方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしています。(新第6条第2項)

(5)更なる海岸漂着物対策として、民間団体や個人の果たす役割が大きいことからその活動を推進するために表彰制度が創設されました。また、国は国際的な連携確保と国際協力の推進に必要な措置も講ずることとしています。(新第25条第3項)

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