一般家庭や事業所、並びに医療機関等から日々発生する廃棄物の処理は、日常生活や社会活動を支える必要不可欠な事業の一つです。新型コロナウイルス感染症の広がりとともにその感染リスクが引き続き高まる中、日常生活、医療活動をはじめとする社会経済活動を支える廃棄物の処理を新型コロナ感染症の感染により途絶えることなく継続していくために、廃棄物処理の観点から見た留意点を簡潔にとりまとめました。
1.新型コロナウイルス感染症に伴い排出される感染性廃棄物
一般家庭や事業所からは、新型コロナウイルス感染者の呼吸器系廃棄物として鼻水、痰、唾液等が付着したティッシュや使用済みマスク、排泄系分泌物として使用済みの紙おむつ等が一般廃棄物又は産業廃棄物として排出されます。
一方、医療機関からは、感染性廃棄物として、感染症の診断・検査に使用された検査試験用キット・綿棒、治療や手術に使用された医療器材・ディスポーザブル製品・衛生材料・点滴キット・感染対策キット・血液・病理廃棄物等、医療従事者が用いた使用済みの医療用マスク(N95)・ウイルス防護服・手袋・シューズカバー・防護ゴーグルやフェイスシールド等が、感染性廃棄物として排出されます。新型コロナウイルス感染者やその疑いのある人が使用したリネン類は、手袋やマスクを着用して直接触れないないようにして熱水による洗濯やアルコール・次亜塩素酸等による消毒がなされます。
図表 感染性廃棄物とみなされるものの例
区 分 | 感染性廃棄物とみなされるもの |
一般家庭や事業所から排出されるもの | 感染者の鼻水、痰、唾液等が付着したティッシュや使用済みマスク等の呼吸器系廃棄物 |
感染者の使用済みの紙おむつ等排泄系分泌物 | |
自宅等で感染者自らが使用した医療器材(インスリン等使用済み自己注射針等) | |
医療機関から排出されるもの | 感染症の診断・検査に使用された検査試験用キット・綿棒等 |
治療や手術等に伴い発生する血液、血清、血漿、体液 | |
手術等に伴って摘出または切断された臓器、組織、郭清に伴う皮膚等の病理廃棄物 | |
治療や手術に使用され血液等が付着した医療器材(注射針、メス、試験管、シャーレ、アンプル、バイアル等ガラス製器材)、ディスポーザブル製品(ピンセット、ハサミ、トロッカー、注射器、カテーテル類、透析等回路、輸液点滴セット、手袋、血液バッグ、リネン類等)衛生材料(ガーゼ、脱脂綿、包帯等)、点滴キット(針、チューブ類、エアー針等)、感染対策キット等治療または検査等から排出されるもの | |
ダイアライザー、チューブ等に含まれる血液が一体となった透析等回 | |
路 | |
感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室及び検査室において検査、治療、手術等に使用された後に排出されたもの | |
医療従事者が用いた使用済みの医療用マスク(N95)・ウイルス防護服・手袋(アウター・インナー)・シューズカバー・防護ゴーグルやフェイスシールド等 |
2.家庭や事業所等でのごみの捨て方
一般家庭や事業所では、新型コロナウイルス等の感染症に感染した人またはその疑いのある人が、鼻水等が付着したマスクやティッシュ等のごみを捨てる際には、
・ごみ箱は事前にごみ袋をかぶせて使う。
・ごみ箱が転倒してごみが室内に散乱することのないようにする。
・ごみに直接触れないようにして、ごみ袋の空気を抜いてごみ袋はしっかりと縛って密閉し、内容物が外に出ることのないようにして捨てる。
・ごみ袋が破れる恐れや隙間がある場合にはごみが散乱することのないように、ごみ袋を二重にして密閉性を高めてごみ収集運搬者の感染防止対策をする。
・ごみを捨てた後は石鹸を使って手をきれいによく洗う。
等、感染防止対策のほか、日常的な「生ごみの水切りをする」、「食べ残し等のないようごみを減量する」、「自治体の分別・収集ルールを守る」等減量化対策も必要です。
医療機関の感染性廃棄物は、耐通気性・密閉性を併せもつプラスチック製容器等を用いて排出されています。
新型コロナウイルス感染者やその疑いのある人が使用した従来資源化されているペットボトル、缶、びんや容器包装廃棄物等は、感染力がなくなるとされる期間が3日間程度であることや資源ごみの収集頻度を踏まえて1週間程度経ってから排出するか、可燃ごみ(燃やすごみ)に区分して排出するよう推奨されています。
3.感染性廃棄物を含む廃棄物の処理
感染性廃棄物を含む廃棄物は、原則として次の方法により処理されています。ただし、一般家庭等で感染性廃棄物の一部が資源ごみや不燃ごみに分別・混入している場合もあり、注意が必要です。
図表 感染性廃棄物を含む廃棄物の処理方法
区 分 |
処 理 方 法 |
一般家庭や事業所から排出される廃棄物 | 焼却または溶融する方法 |
医療機関から排出される感染性廃棄物 | 焼却または溶融する方法 |
高圧蒸気(オートクレーブ)または乾燥により滅菌する方法 | |
消毒する方法 |
なお、一般廃棄物焼却施設の機能検査については、防護服の確保が困難なことから施設の検査及び点検に従事する者の安全及び施設の安全性を確保する観点から、当面の間、機能検査の頻度を「1年に1回」から「1.5年に1回以上」に、精密機能検査の頻度を「3年に1回」から「3.5年に1回以上」に延長されました。
4.自治体における事業継続計画の必要性
一般廃棄物の処理を担っている自治体は、一般廃棄物の処理責任を有することから、感染防止等の事業継続のための取組みに努める必要があります。災害時を想定して策定する「一般廃棄物処理基本計画」は、一般廃棄物処理事業を継続するためのごみ収集・処理処分の事業継続計画を反映することが必要となります。
※関連資料
〇環境省「廃棄物処理における新型インフルエンザ対策ガイドライン」平成21年3月
〇環境省「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」平成30年3月
〇環境省「廃棄物処理における新型コロナウイルス感染症対策に関するQ&A」令和2年5月8日
〇環境省「新型コロナウイルス感染症にかかる廃棄物の処理及び感染拡大への対応に関する通知等」
〇日本環境衛生センター・日本産業廃棄物処理振興センター「廃棄物処理業における新型コロナウイルス対策ガイドライン」令和2年5月