廃プラスチック問題(第3報)

 UNEP(国連環境計画)によると、日本は1人当たりの使い捨てプラスチックの使用量が米国についで世界の二番目に多いとされ、年間100万トンの廃プラスチックを東南アジアなどに輸出してきています。世界的な動きでは、バーザル条約に廃プラスチックが追加されその海外輸出が禁止となるほか、欧州(EU)では使い捨てプラスチック製品の使用禁止が決まりました。

 日本においても廃プラスチックの輸出をなくすための方策や、その生産と使用を見直していくための3R、発生抑制、再使用、リサイクルの手法について漸進的な対応が急務となっています。

 廃プラスチック問題に関するこれまでの経緯とその対応状況を整理しました。

1.廃プラスチック問題のこれまでの主な経緯
〇2015年 中米コスタリカ沖でプラスチックストローが鼻に刺さったウミガメが発見された事件をきっかけにプラスチックによる海洋汚染問題が注目され始める。
〇2017年7月 中国が廃プラスチックを含む一部資源ごみの輸入禁止令を発表。翌2018年1月に廃プラスチックや古紙などの資源ごみの輸入を停止。
〇2018年5月 EU(欧州連合)の欧州委員会は、ストローや綿棒などの使い捨てプラスチックを禁止する法案を提案。10月に加盟国が承認。
〇2018年6月 G7首脳会議で、海を漂うプラスチックごみを減らす数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」を発表。日本は署名を見送り、各国から批判を浴びる。
〇2018年8月 鎌倉市海岸でビニル片を胃に含んだシロナガスクジラの死骸が打ち上げられ話題に。
〇2018年10月 ISO(国際標準化機構)は海の中で微生物の働きで分解する生分解性プラスチックの新しい国際規格を2020年に発行を目指す。
〇2018年10月 環境省は、中国がプラスチックの輸入を禁止したことに伴う影響についてアンケート結果を公表。自治体では保管量が24.8%増加。処理業者では廃プラスチックの受入制限または制限を検討が約35%。不法投棄事例はなし。
〇2018年11月 中央環境審議会専門委員会は、環境省が提示したレジ袋有料化の義務付けを含んだ使い捨てプラスチックの削減戦略案を了承、2020年度以降から義務化となる。
〇2018年11月 首都圏の自治体が海洋汚染の問題となっているプラスチックごみを減らそうと対応を急ぎ始める。
〇2018年12月 UNEP(国連環境計画)とWRI(国際環境NGO世界資源研究所)は、使い捨てプラスチック問題に関する報告書を発表。
〇2018年 OECD(経済協力開発機構)報告書で、日本のリサイクル率は22%と、EUの30%を下回る。欧州やOECDではサーマルリサイクルを考慮せずマテリアルリサイクルを重視していることに起因。EUとの温度差が明るみに。
〇2019年1月 政府は、有害物質の越境移動を規制するバーゼル条約に廃プラスチックを加える提案を決定。
〇2019年1月 環境省が、海洋プラスチックごみの削減に向けてプラスチックとの賢い付き合い方を全国に推進する「プラスチック・スマート」フォーラムを立ち上げ。
〇2019年3月 環境省が、「プラスチック資源循環戦略案」をまとめ、2030年までに使い捨てプラスチック容器や包装の排出量を25%減らすなどの目標を掲げる。
〇2019年3月 EU(欧州連合)の欧州議会は、ストローや綿棒等の使い捨てプラスチックを禁止する法案を承認。2021年までに施行予定。
〇2019年5月 EU(欧州連合)の理事会は、海洋汚染対策として10品目の使い捨てプラスチックを禁止対象とした「使い捨てプラスチック製品禁止法」を採択。そのほかにプラスチックボトルは、2029年までに回収率を90%、同リサイクル材料含有率を2025年までに25%、2030年までに30%の目標達成を目指す。
〇2019年5月 「バーゼル条約」の締結国は汚れた廃プラスチックを新たな対象に加えることで合意、可決。2021年度から輸出が困難となる。
〇2019年5月 環境省は、産業廃棄物として事業者から出る廃プラスチックを自治体が引き受けて焼却処分するよう要請するよう通知。
〇2019年5月 マレーシアは、日本、米国、中国などから違法に持ち込まれたプラスチックごみ450トンを強制的に送り返すと発表。
〇2019年5月 UNEP(国連環境計画)は、G20(20か国・地域首脳会議)へ廃プラスチック問題について提言するシンポジウムを開催。
〇2019年6月 大阪で開催されるG20(20か国・地域首脳会議)で、海洋プラスチック削減について議題となる予定。そこで、政府の行動計画が示される見込み。

2.プラスチック使用削減の世界的流れを受けた主な国内の動き
〇2018年9月 大手の日本ストローは、水中で自然分解するストローや紙製ストローの開発を急ぐ。
〇2018年9月 「かながわプラごみゼロ宣言」発表。
〇2018年10月 東京都の小池知事は、小学校で廃プラスチックによる海洋汚染をテーマにした特別授業。
〇2018年10月 千葉市では、不燃ごみとして有料回収していた洗面器やバケツなど10品目の単一素材のプラスチックを10月から資源物として無料回収。
〇2018年11月 埼玉県では、小学校でプラスチック問題の出前講座を開催。
〇2018年11月 北洋銀行は、環境関連機器メーカー(エルコム)に同行のファンドを通じて出資。
〇2018年11月 イトーヨーカ堂(セブン&アイHD)は、レジ袋の有料化やペットボトル自動回収機によるポイント交換を実施。
〇2018年11月 衣料品店などで紙製買い物袋への切り替え(有料)が進む。
〇2019年1月 大阪府と大阪市共同による「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」発表。
〇2018年12月 双日プラネットは、大手外食チェーンと組んで2019年から使用ずみの樹脂製のコップを回収、ペレットにした上で加工メーカーに販売し、最終的に工場から店舗に運ぶ際の容器として使用する廃プラスチック活用実験を開始。
〇2019年2月 ホテル、カフェ、スキー場、ゴルフ場などで紙製ストローの導入が進む。
〇2019年2月 アサヒHDは、カルピスプラスチックボトルを軽量化や、包装なしのペットボトルを拡大。
〇2019年3月 サントリーHDは、使用済みペットボトルをリサイクルして再生産するための工場ラインを茨城県笠岡市工場内に増設することを発表。
〇2019年4月 東京大学は日本財団の支援を受け海洋ごみの問題を研究するプロジェクトを2019年4月から3年間の予定で海に流れ出たプラスチックがどのように変化していくかや、生体への影響を調査する。
〇2019年4月 豊田通商は、静岡県に自動車や家電製品の使用済みプラスチックのリサイクル工場の建設を発表。2021年の稼働を目指し年間4万トンの使用済みプラスチックを再資源化する。
〇2019年4月 製紙大手がプラスチック代替紙製素材の事業化。王子HDは、2019年度に食品包装向けに開発した新素材(シルビオ バリア)の出荷を開始。日本製紙は、マレーシアの包装メーカー(TSP)を買収して素材から包装までに一貫生産体制を構築。
〇2019年5月 大栄環境HDは、大阪府に廃プラスチックリサイクル工場を2020年度より稼働。
〇2019年5月 西武鉄道は、5月下旬から遊園地としまえん等のレジャー施設でプラスチックストローの使用をとりやめ。
〇2019年5月 素材開発のTBMは、石灰石を主原料とし石油原料を大幅に減らした環境配慮型レジ袋や石灰石に樹脂を混ぜたプラスチックを使わない食品容器を開発。帝人フロンティアは、羽毛の代わりに空気を入れて保温するダウンを開発。味の素グループは2030年までにプラスチックの廃棄ゼロを目指す。プラスチック容器を使わない固形のシャンプーも販売されている。
〇2019年5月 日本コカ・コーラは、全国8か所の河川で海洋プラスチックごみの流出経路の調査を始めると発表。

廃プラスチック類等に係る処理の円滑化等について(環境省通知)
https://www.env.go.jp/recycle/pura_tuti_R10520.pdf

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