プラスチック資源循環促進法案の概要 (第4報)

令和3年3月9日、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定され、同日付で第204回通常国会に提出されました。

近年、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応を契機として、プラスチックの資源循環を一層促進する重要性が高まりつつあります。

この法案では、国はプラスチックの排出抑制・回収・再資源化等を促進するための総合的・計画的な基本方針を定めてプラスチック使用にあたり環境での配慮設計指針を策定し、認定プラスチック使用製品の調達の推進が促進されるよう配慮することとなっています。また、地方公共団体はプラスチック使用廃棄物の分別収集と再商品化に必要な措置を講ずるよう努めものとされ、製造事業者は製造・販売したプラスチック使用製品が使用済みとなったものの自主回収と再資源化計画を作成し、実施することができるとしています。

今回、この「プラスチックに係る資源循環の促進に関する法律案」についてのこれまでの策定経緯とその内容について整理しました。

 

1.プラスチック資源の分別回収に向けた今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向

経済産業省と環境省は、令和2年度からプラスチックごみの削減や循環利用に向けた具体策を検討する合同会議を開催している。2020年9月1日には今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性についてとりまとめ、容器包装を含むプラスチック製の容器包装と製品を資源ごみとして一括で分別回収するように、市区町村に要請する方針へ転換している。

これまではペットボトルや食品トレーなどのプラスチック製容器包装廃棄物は多くの市区町村でリサイクルが進んでいるが、玩具などのプラスチック製品はリサイクルの対象となっておらず、新たな分別の括りを「プラスチック資源」として、プラスチックのリサイクル拡大を目指すものである。

新たに分別回収しようとするプラスチック資源は、プラスチック製の玩具、洗面器やバケツなどで、その回収は市区町村が担っているが、現状、地域によって取り扱いが異なり、可燃ごみとして焼却されたり、不燃ごみとして埋立処分されたりしている。

今後の基本的方向としては、家庭から排出されたプラスチック製容器包装や製品については、プラスチック資源として分別回収することを政策の方向とし、市区町村とリサイクル事業者で重複している選別などの中間処理を一体的に実施できるよう環境の整備を促進するものである。

 

2.プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の概要

(1)基本方針の策定

プラスチックの資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するため、次の事項などに関する基本方針を策定する。

○プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計

○ワンウェイプラスチックの使用の合理化

○プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化など

(2)環境配慮設計指針の策定

製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した設計であることを認定する仕組みを設ける。また、認定製品を国が率先して調達するプラスチック使用量が少ない製品やリサイクルしやすい設計の製品などをグリーン購入法上の配慮とともに、リサイクル材の利用に当たっての設備への支援を行う。

(3)ワンウェイプラスチックの使用の合理化

ワンウェイプラスチックの提供事業者(小売・サービス事業者など)が取り組むべき判断基準を策定する。また、主務大臣の指導・助言・ワンウェイプラスチックを多く提供する事業者への勧告・公表・命令を措置する。また、使い捨てのプラスチックストローやスプーンなどを消費者に無償で提供する飲食店などに対し、当該飲食店が消費者にそれが必要かどうかを確認し、あるいは有料化するなどの措置を講ずるための判断の基準を策定する。この基準に著しく逸脱する店舗には改善を促す勧告や命令、50万円以下の罰金を科す場合もある。

(4)市区町村の分別収集・再商品化の促進

プラスチック資源の分別収集を促進し、容器包装リサイクル法ルートを活用した再商品化を可能にする。また、市区町村と再商品化事業者が連携して行う再商品化計画を作成し、主務大臣が認定した場合に、市区町村による選別、梱包などを省略して再商品化事業者が再商品化を実施することを可能にする。

(5)製造・販売事業者等による自主回収の促進

製造・販売事業者などはプラスチック製品などを自主回収・再資源化の実施に関する計画書を作成し、主務大臣が認定した場合に、認定事業者の廃棄物処理法の業許可を不要とする。

(6)排出事業者の排出抑制・再資源化の促進

排出事業者は排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準を策定する。また、主務大臣の指導・助言・プラスチックを多く排出する事業者への勧告・公表・命令を措置する。加えて、排出事業者などは再資源化事業計画を作成し、主務大臣が認定した場合に、認定事業者の廃棄物処理法の業許可を不要とする。

経済産業省は、資源循環の高度化に向けた環境整備・サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を進めるとしている。環境省は、2019年に策定した「プラスチック資源循環戦略」の中で2030年までに使い捨てプラスチックの排出を25%減らして再生利用を倍増する目標を掲げている。プラスチックに注目した法律の制定は初めてであり、新たに資源循環型経済に向けて社会を移行させていこうとするものである。

今後は、金属などとの複合製品が多いプラスチック製品のリサイクル技術の確立と廃棄物処理施設の整備が必要であり、リサイクル率を高めるとコストが膨らむことから、全国で分別収集体制を整備できるように市区町村の取り組みを後押できる交付金などによる負担の軽減を図ることなどが課題と言える。

 

3.これまでの通商産業省と環境省の合同会議の動き

〇2020年5月12日 「プラスチックの資源循環をめぐる国内外の状況について」中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ 合同会議(第1回)

〇2020年5月26日 「プラスチック資源循環に関する関係者ヒヤリング」中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ 合同会議(第2回)

〇2020年6月23日 「プラスチック資源循環に関する関係者ヒヤリング」央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ 合同会議 合同会議(第3回)

〇2020年7月21日 「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性について」産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ、中央環境審議会循環型社会部会 プラスチック資源循環小委員会 合同会議(第4回)

〇2020年9月1日 「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性について」産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ、中央環境審議会循環型社会部会 プラスチック資源循環小委員会 合同会議(第5回)

〇2020年10月20日 「今後のプラスチック資源循環施策に関する論点整理」産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ、中央環境審議会循環型社会部会 プラスチック資源循環小委員会 合同会議(第6回)

〇2020年11月20日 「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)」中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ 合同会議(第7回)

〇2021年1月28日 「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について」産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ、中央環境審議会循環型社会部会 プラスチック資源循環小委員会 合同会議(第8回)

 

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について(環境省)

https://www.env.go.jp/press/109195.html

プラスチック資源循環小委員会(環境省)

https://www.env.go.jp/council/03recycle/yoshi03-14.html

 

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